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小泉訪朝と拉致問題

2002928

宇佐美 保

 小泉訪朝の結果、拉致事件の存在を金正日が認め謝罪したのに、何故マスコミは小泉首相外務省の努力を認めないのですか?

国際的にもその存在が恥ずかしかった森前首相は、“行方不明者が、北朝鮮以外の土地パリなどで見つかった事にしたらどうだろう。” として、拉致問題を解決しようとしていたことに対して、マスコミはどのように反応しましたか?

 その方法を非難しましたか?

その際、マスコミは、“唯一残された拉致被害者の救出方法を世界中にオープンにしてしまっては、今後その有効な手段が使えなくなってしまった!”と非難したのではないですか!

当時、マスコミは拉致被害者の救出だけを目的として、拉致事件の真相追及を目的に掲げていましたか?

 

 なのに今になって、“金正日は、拉致事件は部下の暴走の結果であって、自らは関与していないと言うのは筋が通っていない。金正日の直接の関与を明らかにすべきだ。” と喚き立てるのは、誠に可笑しい事です。

そして、北朝鮮に対して、マスコミは日頃 “金正日による独裁国家であって、どんなに酷いことがあっても当然の国。”と書き、又、悪の枢軸とブッシュ米大統領に非難されている国では、なにが起こっても不思議ではないのではありませんか?

全員が、お気の毒にも亡くなっていても不思議ではなかったのではありませんか?

なのに、拉致被害者の方々の内、8人が(処刑とも思われるように)亡くなられている事実が判明すると、北朝鮮への非難の声を殊更に大にしました。

 可笑しくありませんか?

マスコミも今まで「能天気」であったことの証明ではありませんか?

 

 更に可笑しいことは、朝日新聞の09月28日の《天声人語》には、次のように書いています。 

 「なんでラチされなあかんの!? 日本が北朝鮮にしたことは悪かったと思うけど、横田めぐみさんらとは何もかんけいないと思う。文句あるんやったら政府にゆうたらええやんっ!!」。拉致事件をめぐる中学2年生の声である。 ……

 こんな意見を正面切って取り上げる朝日新聞の見識を疑います。

日本の朝鮮に対する植民地政策の犠牲者への責任は、我々日本人一人一人にあるのではないのですか!

特に、先の一連の戦争を支持したのもマスコミ、朝日新聞ではなかったのですか?

マスコミ、朝日新聞にも、朝鮮の方々への責任はないのですか?!

 

 そして、“日本側は、過去の植民地支配によって、朝鮮の人々に多大の損害と苦痛を与えたという歴史の事実を謙虚に受け止め、痛切な反省と心からのお詫びの気持ちを表明した。” との日朝平壌宣言のなかでの「日本側」とは、「小泉首相とその席に同席した日本人達」ではない筈です、「我々日本人全員」であるべきなのです。

なのに、今我々は、このお詫びの気持ちを小泉首相らと同じように抱いているでしょうか?

 

 更には、“双方は、国交正常化を実現するにあたっては、1945年8月15日以前に生じた事由に基づく両国及びその国民のすべての財産及び請求権を相互に放棄するとの基本原則に従い、国交正常化交渉においてこれを具体的に協議することとした。”との事項を共通の認識として確認した北朝鮮側への感謝の気持ちを日本人全員は持つべきではありませんか?

 

それなのに、“北朝鮮は金正日の独裁国家であって、北朝鮮国民の意思を代表してはいない!”、“北朝鮮は瀕死状態なので、先ずは日本からの財政支援が今すぐ欲しいから、過去の責任問題を棚上げしただけ。”とせせら笑うマスコミも御座いましょうが、私たちが感謝の心を忘れ、相手の気に入らない点だけを論っていたら、この地球上にいつ平和が訪れるのですか?

 

 確かに、拉致被害者のご家族の方々は、長年にわたって、政治家外務省などに訴え続けていても、耳を貸してくれなかった上、処刑されてしまったのではないかと思える事実を突きつけられた今、ご家族の無念さは、私達には、計り知れないものが御座いましょう。

 

 しかし、私には、お気の毒な拉致被害者のご家族の件で解せないことがあるのです。

私が見たテレビのニュース番組、そして、小泉首相との会見の翌日の朝日新聞紙面などで、今回の担当者たちへの謝意のお気持ちが取り上げられていないのです。

(只お一人、石岡亨さんのお兄さんの章さんの談話中に“訪朝時から小泉首相がしてきたことを評価している” との言葉が目に入って来ただけでした。)

或いは、もっと多くのご家族の方々が謝意を述べられているのに、マスコミが取り上げていないのかもしれません。

だとしたら大変問題だと思います。

私は、相手にどんなに不備があっても、その相手が何らかの行為を自分に示してくれた際には、感謝の意を表するのが人の道だと思うからです。

 

 ですから、今回の北朝鮮の譲歩は、其れが彼らの策略であったとしても、先ずは謝意を表すべきだと思うのです。

そして、拉致被害者の方々、又、ご家族の方々も大変辛いことでしょうが、見方を変えれば、北朝鮮の一般国民も、金正日一党に拉致されている状態ではないのでしょうか?

そのような気の毒な北朝鮮の方々への人道的支援的支援は、例え、生存者の4名の方々のご帰還前でも実施することを認めてあげて欲しいのです。

 

 翻って、わが国の状態を見れば、私たちも、「族議員たち」に拉致されているのと同じだとも思います。

品性に掛ける彼等は、日本の財政が破綻に面しているこの時期に及んでも、自らが、国会議員であり続ける為に、選挙地盤への利益誘導型政策(高速道路、下水道網の確立など)を臆面もなく進めようとしています。

誠に偶然の出来事として、そのうちの一人(鈴木宗男議員)だけが、瓢箪から駒のように塀の内側に転げ落ちただけです。

何しろ、「建設族議員」などは、地元の倒産寸前のゼネコンに公共事業を請け負わせ、その見返りとして政治献金を受け取っていても、“その企業からは今までも毎年献金を受け取っていたので、口利きの見返りではない!”と白を切ります。

心ある政治家なら、“赤字で財政に苦しむ企業からの献金は、謹んで辞退するのが人の道”と思う筈です。

 更には、バブルに踊って経営を誤り、その結果国民に多大な迷惑を被せても、なんら責任を取らない銀行幹部の輩などなど。

 

このような恥知らずな「族議員たち」等が跋扈するから、今回の事件に絡んで、朝鮮学校の生徒さんたちへ嫌がらせをする輩が多く輩出されるのだと思います。

 

 日本の国は経済の発展と共に、人間として最も大事であるべき「品位」「品格」を無くして来てしまったのではないでしょうか?

 

 この地球上で、アメリカだけが繁栄を許されるのではないように、このアジアにおいても日本のみが繁栄を許されているのではなく、近隣諸国も同様な権利を有している筈です。

とは申しましても、「族議員たち」に拉致されている日本人は、近い将来に、今の繁栄を夢物語として懐かしみ、悲しむ日が来るのかもしれません。

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